我が名はムッシュ / ムッシュかまやつ
我が名はムッシュ / ムッシュかまやつ

商品番号:RMCA-1006
全13曲
64pブックレット封入 特殊紙ケース
¥3,059(tax in)

小西康陽プロデュースによる、ムッシュかまやつの音楽的自叙伝。
堺正章、市川実和子ほかゲスト多数。これは耳で聴くドキュメンタリィ映画。というかやっぱりムッシュの『自己ベスト』。豪華執筆人による64Pブックレット付。


ゲストミュージシャン:
堺正章 市川実和子 あいさとうfromヘア
堀江博久fromニール&イライザ 沖井礼二fromシンバルズ
和田卓造fromワックワックリズムバンド

執筆者:
松任谷由実 小山田圭吾 曽我部恵一 ミッキー・カーチス
横山剣(クレイジーケンバンド) カヒミ・カリィ コモエスタ八重樫
あいさとう(HAIR) 市川実和子


01. イントロダクション
02. ボブ・ディランはいま何を考えているか
 詞 / 曲: かまやつひろし
03. ソー・ロング20世紀
 詞 / 曲: かまやつひろし
・ ムッシュ、音楽に目覚めた頃を振り返る
04. キャラバン recorded in1960
 詞 / 曲: duke ELLINGTON , juan TIZOL , irving MILLS
・ ムッシュ、スパイダースを回想する
05. バンバンバン (READYMADE SPYDUCTION mix) remixed by 小西康陽
 詞 / 曲: かまやつひろし
・ 堺正章氏がムッシュとの出会いを語る
06. ヘイボーイ duet with 堺正章
 詞: ささきひろと / 曲: かまやつひろし
07. なればいい (GROOVE ROOM mix) remixed by 小西康陽
 詞:オリベゆり / 曲: かまやつひろし
・ ムッシュ、60年代のプレイスポットを回想する。
 そしてZUZUの話
08. 二十才のころ duet with 市川実和子
詞: なかにし礼, 安井かずみ / 曲: かまやつひろし
09. ノーノーボーイ
 詞: 田辺昭知 / 曲: かまやつひろし
・ ムッシュ、カントリー・ミュージックへの愛を語る
10. どうにかなるさ
 詞: 山上路夫 / 曲: かまやつひろし
・ ムッシュ、父ティーブ釜萢氏を語る。
11. Tea for two
 詞 / 曲: vincent YOUMANS, irving CAESAR
12. ゴロワーズを吸ったことがあるかい
 詞 / 曲: かまやつひろし
・ ふたたび堺正章氏がムッシュを語る。
13. やつらの足音のバラード
 詞: 園山俊二 / 曲: かまやつひろし



ぼくの伯父さんを御紹介します。                        小西康陽
ぼくが最初に聴いたスパイダースの曲は『エレクトリックおばあちゃん』。毎朝観ていたTBSの「ヤング720」という番組で演奏していたのを憶えている。GSブームの終わり頃だ。
やはりTBSの日曜の午後のヴァラエティふうの番組で、ムッシュが出てきて海外の最新のおしゃれ事情を話す短いコーナーがあったのだけど、あれは何という番組だったかな。ぼくの記憶に間違いがなければ、いつも黒い長袖のTシャツを着ていて、胸に小さく"MONSIEUR"というロゴが入っていたはずだ。
もっとはっきり憶えているのは、日テレで日曜正午から放映していたロックのコンテスト番組でムッシュが司会を務めていたこと。司会のアシスタントがシェリーというハーフのタレントで、ぼくは彼女のことがたまらなく好きだった。いま考えるとアマチュアのはずがないバンドも出ていたけど、ときどき模擬試験などでこの番組が観られないときはすごく悔しかった。そう、ぼくはその頃からロック・ミュージシャンになりたかったのかもね。
そんなふうにムッシュはずっとTVの世界の人だった。
ところが高校時代、SONYのスカイセンサーという高感度ラジオで必死になって追いかけていた大滝詠一氏の「ゴーゴーナイアガラ」という番組でスパイダースの『あの時君は若かった』という曲を聴いてショックを受けた。スパイダースってこんなにカッコいいグループだったんだ。すぐに中古レコード店でそのシングルと16曲入りのベスト盤を手に入れた。そのベスト盤のジャケットに写っていたスパイダースの面々はなぜか全員三つ揃いのスーツを着ていて正直な話、あまりカッコよくなかった。ある日ムッシュにその話をしたら、ああ田辺さんの趣味かも知れませんね、と言っていた。
ピチカート・ファイヴというバンドをはじめてから間もないある日、南青山の骨董通りでぼくは初めてムッシュを目撃した。船乗りの帽子にモッズふうのカーキのパーカ、おなじみのスリムなジーンズに黒のブーツ。"パイドパイパーハウス"というレコードショップの紙袋を小脇に抱え、路上駐車しているジープまで歩くその後ろ姿はB級中年ブリティッシュ・ロッカー。わびしいような微笑ましいような。カッコいいのか悪いのか。でもやっぱりカッコいい、とそのとき思った。
いまは「RELAX」誌の編集長である岡本仁氏が「ガリバー」という旅行誌の編集者だったとき、ぼくにロンドンに取材に行く仕事をくれた。カラー数十ページ、ムッシュをフィーチュアして構成する特集だった。岡本さんとふたり、とあるウィークディの午後、ムッシュの六本木の"隠れ家"を訪問した。小さな冷蔵庫からムッシュはシャンパンをぼくたちに勧めてくれた。目醒まし用に飲むのが好きで買い溜めしてるんです、とのこと。カッコいいのか悪いのか。でもムッシュはムッシュというキャラクターをとても気に入ってるんだな、ということはわかった。ロンドンで約三週間というもの同宿してムッシュのことはもうすこしわかった。話し好きで話し上手。サービス精神、というのか、その場の空気を読み取ることの天才。あまり楽しいはずのない人生を楽しく生きる達人。その旅の終わり近く、ぼくはいつかムッシュのレコードを作りたいと考えた。ムッシュにもそのことを話した。
東京に戻ってから、ぼくはそのレコードの話を忘れていた。あくせくした10年が過ぎ、ことしのお正月、エールフランスの機内でアンリ・サルヴァドールのヴィデオクリップを眺めていて突然、想い出したのだ。
ムッシュはぼくの口約束を憶えていてくれた。そうして出来上がったのが、いま皆さんが手にしているこのアルバムだ。
ここで取り上げたムッシュの作品は、どれもみなオリジナル・ヴァージョンのほうがずっとずっと素晴しい。夜ごとムッシュとシャンパンを飲み過ぎたせいで制作予算を使い果たしてしまい、今回取り上げられなかった名曲もたくさんある。
だからもしこのアルバムを聴いて楽しんでもらえたなら、ぜひムッシュの、あるいはスパイダースのオリジナル音源を探して聴いてもらいたい。きっと気に入ってもらえるはずだ。
いちおうぼくがプロデュースした作品ということになってはいるけれど、多くのアイデアやヒントを、ムッシュはいつも絶妙のタイミングで授けてくれた。ジャケットもそうなのです。
これはあんまり指摘されないことだから書いておくが、ムッシュは作詞家として素晴しい。『バンバンバン』の詞なんて完璧だ。ニクい男と、さらに一枚上手のニクい女。これがスパイダースの世界観なのですね。そして『ゴロワーズ』。ムッシュがこの詞を作ったのは、いまのぼくよりも若い30代の半ば頃。素晴しい、としか言いようがない。
ぼくの伯父さんを御紹介します。というのがこのアルバムを作っていて最初に考えたコピーだった。日本のロックの、ポピュラー音楽の世界に、こんな素敵な人がいるなんて。
リスペクト、とか言うんじゃなくてさ。ぼくはムッシュのカッコよさをわかってもらいたいだけなのだ。

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